
こんにちは!おハムです
先輩がごみ屋敷を担当することになりました。話を聞いていて、なぜゴミ屋敷になるのかとても疑問に感じたので、調べてまとめてみました
(個人が特定されないように内容を一部変えて表記しています)
登場人物
認知症 88歳 生活保護
非常に痩せている デイサービス・ショートステイ利用
自身で片付けることができない
55歳 無職(職を転々としている)
生活保護費がはいるとすぐにパチンコ・飲み屋に行ってお金を使ってしまう
気はやさしい 介護費用の滞納あり
アパート内がゴミ袋でいっぱい、袋に入っていないゴミも散乱
玄関の外にもゴミが溜まっている
本人のベッド上以外に足の踏み場もない
ゴミ屋敷以外にも問題や山積みの家庭ですが…
今回はゴミ屋敷に注目して考えてみようと思います
ゴミ屋敷って何?
ゴミ屋敷とは…居住空間がゴミで溢れかえって、住民の健全な日常生活が損なわれ、不衛生・悪臭・景観を害す・家事の恐れなどで近隣に迷惑を及ぼしている状態で家屋を指す
多くの場合、そこの住人は独居で、苦情や話し合いに応じようとしない
問題なのは、ゴミ屋敷に住んでいる当人はゴミを“ゴミ”と認めず、リサイクルのための資源であると主張されることもあります
別に何も困っていないです
このままでいいです
近所や市役所からは片付けるように言われているので片付けます
(…一向に片付かない)
なぜゴミ屋敷になるのか?
本人に理由を確認しても明確な返答が得られない…
《ゴミ屋敷の一般的な原因》以下の3つが共存したり、移行したりする
①不本意ながらにゴミが溜まっていく:身体の不自由・認知症により、ゴミの分類ができない、ゴミが出しの作業が遂行できない、その援助を仰ぐ能力が欠如している
②心のスキマをゴミで埋める:統合失調症なでで、他人からは無価値に見えるものを溜め込まずにはいられない、雑多なものに囲まれていることで安心感を覚える、ゴミと仲良く暮らしている
③心のバリケード:近隣からの避難や苦情が寄せられると、ゴミ屋敷の住人は頑なに心を閉ざし、周囲は敵ばかりと感じる。するとゴミは物理的なバリケードとなり、心の援軍化する
息子さんは、口頭では「片付ける」と言いますが、毎月片付いていない状態
Aさんもなんとも思っていないというか、困っていない。息子さんを尊重している発言をされています
①も②も③も該当するように感じます
病気だからゴミ屋敷になるのか?病名がつくとしたら、“認知症”と“統合失調症”がほとんど!
“認知症”の場合
ゴミを捨てたい気持ちがあるのものの、捨てる行為ができずに結果としてゴミ屋敷につながる
・異食や弄便が見られるが、飢えへの不安や口唇期への退行によって食べ物以外のものを口にしたり、便を不潔と認識したり始末する能力が失われた結果おこる
・金銭の貯蓄・予備品の買い置きのような感覚で、ゴミを溜めたり集めたりする行為が出現している可能性もある
“統合失調症”の場合:
・幻覚や妄想は治療や時間の経過により徐々に経過ししていくが、「こだわり」や常同行動(パターン化した反復行為)が出現することが多い
⇓
・はじめは妄想からゴミへの執着が生じることがあるが、いつしか目的を失ったまま、ゴミの収集のみ持続
⇓
「集める」「取っておく」という振る舞いそのものに日々の意味を見出している
⇓
第三者が勝手に片付けようとすると、再び妄想が再燃し興奮する
本人が「ゴミ」と思っていない場合、援助者側が「ゴミ」と口にすることで「自分を理解できない人」と信頼関係の構築の妨げになってしまう可能性があります
その他に考えられる病態
・強迫神経症:実際にはありえない事柄や状況に対する不安感に、それが不合理でバカバカしいと分かりながらも過度にとらわれ、その不安を解消するために一見無意味で過剰と思われるような行動を繰り返す病気のこと。ゴミ屋敷になるほどのエスカレートは考えにくい
・うつ状態:長期化した“うつ状態”がゴミを溜め込む可能性もあるが、原疾患が認知症か統合失調症からの場合が多い
・パーソナリティ障害:ものの考え方や行動様式(行動の仕方)などが、一般の人と比べて著しく異なった状態になる病気。薬物治療やカウンセリングの効果は乏しい
これらをみると、本人の認知症があるものの同居家族が対応できればゴミ屋敷になる可能性は低い
息子さんのパーソナリティ障害か統合失調症が1番怪しい!
孤独感と孤立感
ゴミ屋敷の住人は、独居が圧倒的に多く、親戚縁者とも交流がない
複数人が住むゴミ屋敷があったとしたら、その孤立し閉塞した少世界の中で、強い影響力を持った人物の精神状態にほかが呑み込まれており、周囲からのアプローチや非難は「試練」としてますます結束力を強めることになる
ゴミを捨てないということは「未来を拒む」という心性に近いのではないかとの見解もある→「ゴミ屋敷の内部では時間が淀み、停滞している」
「孤独状態」「孤立状態」は精神のバランスを失わせ、当人が「我に返る」機会を遠ざける
そもそも1人でいると、当たり前や常識がわからなくなってくる
心を病むということは、「当たり前」がわからなくなり、それを補うべく、独自の理屈や固執によって自壊していくプロセスで、ゴミ屋敷はそのプロセスが可視化されている状態であるとも言える
ごみ屋敷問題の解決には、本人を「孤独感」「孤立感」から引き離すことが重要なはずですが、ゴミが「心のバリケード」になっていることが稀ではないため、手の出しようがなくなってしまう
ゴミを自身を守る術(心のバリケード)として認識しているから、護身のつもりで配置しているとも考えられます
どのように対応すればいいのか
本人がゴミを捨てたいのに、捨てられない状況であれば、ゴミ捨ての手配を進めればいいのですが…
・強引にゴミを捨ててしまうとトラブルは避けられない。「ないがしろにして心のバリケードを突き崩す行動」であると捉えられてしまう
怒りと不安が強くなり、相手を混乱させたり、反感を持たれることが多い
・親類縁者を見つける:(関わり拒否されることのほうが多いのですが…)。協力は得られなくても、強行掃除になった際の了解をとっておくことと、生活史を伺うことで利用者理解に繋げられる可能性はある
この人からアプローチしてもらえばベスト!
昔の年賀状や、手帳のどこかに連絡先が書いてあることも!
認知症が原因である場合は成年後見制度に結びつけていくことも多い
その意味でも親族を探すことは大切!
成年後見が必要であれば、行政につなげて行政から職権で調べてもらうことも可能です
・コミュニケーション:ゴミ以外の話題から関係性を構築。溜まったゴミでトイレが使えないなどの不便さがある場合は、ゴミの話よりも当人の不便さに焦点をあてて、味方として接近する
・ある程度交流が深まれば、勢いで一気に片付けても抵抗がない…場合もあったとか…
親類縁者はいない(縁を切られている)
トイレには…なんとか入れているため…
とりあえずご本人との関係性作りからスタートですね!
援助者の立場とは
人の心は「顔つき」「家の中の様子」に反映されやすい
屋内にゴミがたまり錯乱し始めた時、当人はまぎれもなくなにか大切なものを放棄している、それは「自尊心」「羞恥心」「良識」「当たり前・普通の感覚」
ゴミ屋敷の住人は「時間が淀み、停滞している」世界に住んでいる
援助者は、介入によって生き生きとした時間の流れを復活させる役割を担っているといえます
今回のケースでは数年かけて支援しても、ゴミ屋敷やその他問題が解決させず対応が困難であるため、地域ケア会議に持っていっています
部屋が汚すぎて訪問介護さんが介入を躊躇する場合
介護保険は日常生活を支えるサービスのため、大量のゴミを片付けることは想定されていません。「どうやって片付けるか」が最初のハードルになると言えます
生活保護の場合:生活保護法以外の市町村の独自施策で、産業廃棄物収集運搬業許可をとっている運送会社に片付けを依頼する場合もあります
生活保護以外の場合:業者にお願いする場合は本人にお金を出してもらう、あるいは親族を探すことになります。社会福祉協議会・NPO有償ボランティア・シルバー人材センターを使うことが出来ますがちょっとハードすぎる所もあるので場面に応じて、公的・民間を必要に応じて利用することになります
・ボランティア:きれいな(?)ごみ屋敷
・清掃会社:けっこうなごみ屋敷【量にもよるが、10万くらい】
・特殊清掃会社(孤立死された方の部屋等の清掃を行う):現在進行系で猫をたくさん飼っている・糞がすごい状況で普通の清掃会社でも対応できない場合【30万くらい】
初期段階で初対面の人が介入することは御本人の気持ちがついていかない可能性もあります
トラブルの可能性も考慮が必要
事前に「大事なものは別にしておいてね」と伝えても、後から「時計がなくなった」など言われることがあります
だから、本人に同席してもらうようにすると…
これは捨てないでください。それもダメ!
なかなか進まない…
手間はかかりますが、本人に同席してもらって片付けていくことが1番です
法律的にも、本人が拒否していたら処分は出来ません
その場では納得していても、後から捨てられたと怒られるのではないか不安です
処分に同意をしている証拠を複数残しておくことが大切です
・業者に依頼した場合は領収書に本人の記名がある
・本人の了解、家族の同意、処分の経過を記録に残しておく
・第三者に介入してもらい、複数名で対応することでトラブルの際に自分を守ることが出来ます
強制的に処分ができるのか?
敷地外にもゴミが溢れてしまって、近所の人から苦情が来ている場合に、行政が対応してくれますよね?
《行政代執行》行政が強制的に撤去する
他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。
《行政代執行》は最後の最後の手段であり、要件が非常に厳しいです
・ゴミの体積が現実的に近隣住民の生活を著しく損ねていることが前提でなかなか想定されることではありません
・例えば、「ゴミが多量にあって火事が心配」と近隣の方が心配されていても、「敷地内に燃えるものがあるのは皆該当する」ため理由にはなりません。ましてや、「放火されかねない」という訴えは抽象的すぎて、「現実的」とは言い難いといえます
・たとえ苦情が多くて行政代執行をしたとしても、同じ住民が住むためまた同じ状態になる可能性は高いといえます
・「ゴミ」に注目するのではなく、「人」に焦点を当ててアプローチをしていくことが大切です
1人で抱え込まないためにはどうしたらいいか?
①味方を増やす:
同僚・上司・包括支援センター・行政・ケアマネ連絡会、精神疾患が背景にある場合は保健センターなど
②相談方法:
利用者や家族像がはっきり見えるように報告する
ケアマネが困ってることはわかるが、「肝心の本人がどう思っているのか」「どう困っているのか」が見えない相談が多い
ごみ屋敷自体や近所からの苦情に翻弄されて、「本人の生活」を見失ってしまうことがあります
「近所からの苦情が出たから片付ける」のではなく、「本人が長く自宅で暮らせるように生活環境を整える」ことが前提です
この際に、「公正中立」を履き違えてしまうことも多くあります
利用者と家族、利用者と近隣住人との間で「公正中立」であろうとして苦労されてしまうことがあるかもしれませんが、ケアマネジャーはあくまでも利用者の立場に立つことが決まっています
おまけ:拾ってきたものを集めることは法的に問題ないの?
集積所からゴミを拾ってきた場合、収積所の管理者の占有を侵害したこと“窃盗罪”が成立する可能性がある。仮に占有でないものであっても、他人の物を横領したとして“占有離脱物横領”が成立する可能性もある。ごみ集積所から資源ごみを持ち去ってはならないとする条例がある自治体も多い
それでも、本人は使う予定で拾ってくるので、「持ってきちゃダメ」とは言いにくいです。。。
おまけ:ゴミ屋敷の持ち物
・替えの靴下
・使い捨てのスリッパ
・虫除けスプレー
・ビニール袋
・消臭剤
まとめ
いかがでしたでしょうか?
原因を把握し、ケアマネがどのように介入していくべきなのかを調べ考えてみました
つい、「ごみ屋敷」に目が行ってしまいがちですが、目を向けるべきは「本人への支援」であり、やるべきことは基本と同じであると言えます
ケアマネジャー自身の価値観で「こんな生活ありえない」と思っても「健康を害するほど不衛生でなくて、そこそこ支障がなければそれでもいい」と、生命の危険がない限りは自己決定を尊重するのも方法の一つです(もちろんゴミを片付ける手段や他の生活を提示した上でですが…)
ちなみにAさんは、ごみ屋敷以外もの多くの問題があったため、地域ケア会議の結果、特養に入所させてもらえることになりました。息子さんはどのような暮らしをされているのか…心配ですが、生活保護担当者さんが引き続き支援してくださっています
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